M社と競合するのはたいへんなことだが、M社が守りを固めている領分へ攻撃を仕掛けるのは狂気の沙汰だ。
しかも、N社はただの競争相手ではなかった。
マイクロソフトに先んじてインターネットに乗りだし、自社のソフトウェアを武器としてウィンドウズの顔色をなからしめた会社なのだ。
さらに大胆不敵で、さらに愚かだったのは、N社の技術部門の事業部長だ。
彼はおおやけの場で、ウィンドウズをバグだらけのデバイスドライバを積みあげた二流ソフトだとあざけった。
真実は人を傷つけるだけではない。
人を怒らせるものだ。
ウィンドウズ批判は、M社の重役だけではなく、E氏も怒らせた。
ネットS社の問題は騒音を立てすぎることだった。
こっちも無視できなくなって、剣を持ちだすしかなくもむしろブラウザに近かった。
ユーザーは、ネットサーフィンをするときと同じように、ファイルを開いたりハードディスクを操作したりすることができる。
それどころか、たとえばN社のブラウザのような独立したプログラムを使うのではなく、ウィンドウズそのものでウェブページを検索し、表示することができた。
ウィンドウズとその相棒のインターネットエクスプローラは、ウェブ用デバイスの事実上の標準となる可能性があり、競合他社や政府の反トラスト法違反捜査官から非難をあびるのは目に見えていた。
「M社はブラウザ市場を破壊しようとしている」と批判したのは、L氏だった。
彼は、反M社派の弁護士で、N社をはじめとするマイクロソフトの競合企業の代理人をつとめていた。
リーバックのこうした批判は、のちに、政府による大がかりな反トラスト法違反捜査で何度も引用されることになる。
クロームは、M社が重視するインターネット戦略にぴったり適合していた。
このテクノロジーは、ウィンドウズが動作するコンピュータでしか使えず、ウェブを土台とし、OSにじかに結びついていた。
問題は、まさにそうした理由で議論の的になりかねないということだった。
クロームにくわしい一部の人びとは、このプロジェクトをネットスケープキラーと呼びはじめた。
社内および社外の政治的脅威にますます敏感になっていたので、ただちに使用を禁じた。
それどころか、E氏もそのほかの人びとも、クロームをブラウザと呼ぶことさえやめてしまった。
クロームは、ウィンドウズの拡張機能なのだ。
この変化は、インターネットエクスプローラ4を統合するためにOSを再定義するというM社の戦略がもたらしたものだった。
ブラウザは独立したソフトウェアではなく、ウィンドウズの一部であるという主張だ。
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